運動は健康につながるの?やればいいってものではない

そもそも、なぜ運動が必要なのか

現代人にとって運動というと、何かスポーツをやるようなことを想像します。おおげさなものではないとしても、毎日の生活の中ではちょっと時間をつくって「わざわざ」やるようなものですよね。例えばジョギングであったり、ジムでのトレーニングであったり、部屋でできる簡単な体操でも時間をつくって意識してやります。健康のためにと考えてこういった運動が必要なのは、今の日本においてはただ普段の生活をするだけでは身体活動が不十分だということです。

明治維新から戦後の時期を経て、日本人の寿命は飛躍的に伸びました。それと同期するようにさまざまな欧米的な食文化が渡来しています。食文化だけではなく、風俗や生活習慣なども昔とは違ってきているので、もともと日本人が遺伝的にもっていた体のバランスとズレが生じているようです。だから、なんとなく生活に必要な活動だけをしていては栄養価のバランスが悪かったり、それに気をつけていたとしても身体運動が不十分で体の健康にはよくない状態になってしまいます。

厚生労働省がまとめたデータによると、運動しない人よりも運動をする人の方が癌や循環器系疾患による死亡リスクが少ないそうです。いわゆる3大疾病とよばれる癌、心臓病、脳卒中にかぎってみると、毎日一定以上の運動をしている人は、そうでない人とくらべて3割から4割、死亡リスクが下がります。統計の結果をみるだけでも、やはり運動をしたほうが健康には良いということになるのです。

ただし、運動のしすぎはよくない「過ぎたるは及ばざるがごとし」

一方で、あまり過度な運動をすることは健康によくないという研究報告もあるようです。毎日毎日、熱心にたくさんの運動をする人が、週に数回だけ運動をする人とくらべると心臓発作や脳卒中での死亡確率が上がるというのです。もちろん、まったく運動をしない人が最も死亡確率が高いのですが、すればするほど健康になっていくというわけでもないということでしょう。

たしかに、一般人がプロスポーツ選手のトレーニングのようなことしていては、心臓や血管がどうこういうより前にどこかケガをしてしまいそうにも思います。これまでたいした運動をしていない人が急にフルマラソンを走ってはそれこそ心臓発作でも起こしかねません。われわれはなんとなくそのことを感覚で理解していて、「少しずつ運動量を増やす」ようにしようとは思いつきます。慣れるにしたがって増やしていくということです。

ところが、先に書いたことが事実であるのならば、健康のための運動はどこかでその量を制限しなければいけません。だんだん体力がついてきたからもっと走る距離を増やそうとか、慣れてきたからもっと速く走るようにしようとか、どこまでも増やしていけばいいというものでもないでしょう。それこそプロの世界で結果を残すためにトレーニングするのなら別ですが、健康のために運動をするのならば、適量を心がけないといけないということですね。

自分にとっての適量の運動を知る

では、どれくらいの運動をしていくことが真に健康のためになるのでしょうか。それはまず、一人ひとり違っているということから考えなくてはいけません。それまでまったく運動をしていなかった人であれば、例えばゆっくり30分の散歩をするだけでもいいでしょう。家の掃除をこまめにするようにするだけでもちょっとした運動が増えていきます。最初はとにかく、体を動かす機会を少し増やすということから始めるのが良さそうです。

さて、それでも慣れてくればしだいに運動量を増やしていきたくなるはずです。「こんな少しでは健康になれない」と不安になることもありそうですしね。ただ、前のパラグラフで書いたように、健康のためであるならば毎日やる必要はなさそうです。厚生労働省や運動工学などを研究する期間、医療機関などの指導でも、無理に疲れるような運動をしなくてよいとされています。もちろん、ふだんやっていないことをやるのであれば大なり小なり疲れをともないますが、それもほどほどでよいのです。

また、生活習慣病などの予防だけでなく、ケガをしにくい体を作るということも大切です。このようなことを考えると、生活に必要な分を少し上回る筋力、その筋力を必要より少し維持できる筋持久力、そして全身の持久力と柔軟性を暮らしに必要な分より少し維持できればいいのかもしれません。なかにはストイックな自分に酔ったように過度な運動をしている人もいるようですが、純粋に健康を目的とするのであれば、あまり無理はしないでください。